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子どものインフルエンザで気を付けること

毎年12月頃から季節性インフルエンザが流行し始めますが、今年は11月の時点ですでに流行期に入っています。インフルエンザにかかっても多くの場合1週間程度で回復しますが、子どもの場合まれにインフルエンザ脳症や肺炎、心筋炎など命に関わる合併症を引き起こすことがあります。ここではインフルエンザの症状や注意が必要なこと、ホームケア、予防対策についてなどをご紹介していますので参考にしてみてくださいね。

 

目次

  1. インフルエンザと風邪は違うの?
  2. インフルエンザの特徴と症状
  3. インフルエンザを予防するために
  4. インフルエンザにかかったかも?と思ったら
  5. 子どもの場合、急に症状が悪化することも考えられます!
    インフルエンザ脳症・解熱薬の種類・その他病院受診が必要な症状・異常行動について
  6. インフルエンザの時のホームケア
  7. 登園・登校の目安

記事公開日:2024.11.22

インフルエンザと風邪は違うの?

インフルエンザと風邪症候群の違い

インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染することによって起こる病気です。一般的な風邪に比べて、筋肉痛や全身の倦怠感など全身症状が強くあらわれたり肺炎や気管支炎などの合併症を引き起こす可能性があります。また、インフルエンザウイルスは毎年少しずつ変異するため1回かかっても、その後何度もかかります。

一方、風邪症候群は様々なウイルスによって起こります。インフルエンザと同じように咳、鼻水、喉の痛みなどが出ますが、発熱はインフルエンザほど高くないことがほとんどです。また筋肉痛や倦怠感などの全身症状もあまりみられず、重症化することもあまりありません。また風邪を引き起こすウイルスはたくさんあるので、何度もかかります。

 

インフルエンザの特徴と症状

潜伏期:1〜3日

感染経路:飛沫感染・接触感染

他の人に感染させるおそれのある期間:発症前24時間〜発症後3〜7日

例年の流行シーズン:12~3月  *今年は11月の時点ですでに流行期入りしています!

症状

  • 38℃以上の発熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが突然急激に現われる
  • 発熱に続いて咳、鼻水、喉の痛みなどの風邪症状がみられる
  • 下痢や嘔吐などの消化器症状が現れることもある

合併症
多くの場合約1週間の経過で軽快しますが、子ども(特に5歳未満の乳幼児)は中耳炎の合併、熱性痙攣や気管支喘息などを誘発したり、肺炎、急性脳症など重篤な合併症を引き起こすこともあります。

インフルエンザを予防するために

子どもも大人も日頃の感染予防策が大切です!以下の点に留意して対策してみてください。
  • インフルエンザワクチンの接種
    ワクチンは完全に感染を予防することはできませんが、感染後に発症する可能性を低くしたり、発症した場合の重症化防止に有効とされています。インフルエンザ流行前の接種ができると良いでしょう。
  • 外出後の石鹸と流水による手洗い、アルコール消毒による手指衛生
  • 室内の湿度は50~60%に保つ
    空気が乾燥していると気道粘膜の防御機能が低下しウイルスに感染しやすくなります。
  • しっかり休養をとる、バランスの良い食事をする
  • インフルエンザが流行している時は人混みを避ける

インフルエンザにかかったかも?と思ったら

まずは安静に過ごしましょう

保育園・幼稚園・学校などはお休みして、水分をこまめにとりながらお家でゆっくり過ごしましょう。

病院受診の目安

病院を受診するタイミングは38度以上の発熱がでてから12時間以上48時間以内です。

  • なぜ発熱後12時間以上?

インフルエンザに感染しているかどうかを調べるために、病院で鼻の奥を綿棒でぬぐって検査をします。この時、発熱してすぐだとウイルス量が少ないので正確な検査ができない(インフルエンザなのに陽性が出ない)可能性があります。ただし、辛い症状がある時や普段の様子と違うなど心配な症状がある時は12時間待たずに受診しても良いです。

  • なぜ発熱後48時間以内?

抗インフルエンザ薬は発症してから48時間以内に内服すると、ウイルスが体の中で増えるのを防ぎ発熱などのつらい症状が出る期間を1日短くする効果が期待できます。48時間を超えてしまった場合、十分な効果は期待できなくなってしまいます。

しかし発症から48時間以上経っていても、咳や喉の痛み、発熱を和らげるためのお薬は処方してもらえますので、辛い症状がある時はお医者さんに相談してみましょう。

 

注意!お子様がインフルエンザにかかった時、急に症状が悪化することがあります!

インフルエンザ脳症に注意!

インフルエンザ脳症は、インフルエンザウイルスの感染をきっかけに生じた脳の障害のことで合併症の中では最も重いものです。

特徴

  • 主に6歳以下の小さな子供が発症し、インフルエンザの発熱から数時間〜1日で症状が出る
  • 症状は、けいれん・急速に起こる意識障害・意味不明な言動・普段とは違うおかしな行動が中心
  • 毎年100〜300人くらいの子供がインフルエンザ脳症にかかり、そのうちの死亡率は約30%、後遺症も約25%の子どもに残る
  • 重症化予防にはインフルエンザワクチンの接種が有効

インフルエンザ脳症の症状

インフルエンザ脳症は進行が早いので、早く治療することが大切です。以下のような症状が出たら発熱からの経過時間を気にせずに速やかに病院を受診しましょう。

けいれん

筋肉のこわばりやガクガク・ブルブルとした動きが数分間続く。呼吸がうまくできず顔色が悪くなる。

*高熱が出た時に誘引される熱性けいれんの場合もありますが、どちらの症状なのか見分けが難しいためすぐに病院を受診した方が良いでしょう。

意識障害

なんとなくぼーっとしている、会話が成立しない、すぐにうとうとする、呼びかけたり痛みで刺激しても起きないなど

異常行動・異常言動

普段とは違うおかしな行動をする

例:両親がわからない・いないと言う、動物やキャラクターがやってくるなどの幻視・幻聴、自分の手を食べようとする、理由もなくひどく怯える、全く意味不明な言動やろれつが回らない、急に泣く・怒る・歌い出したりするなど

解熱剤の種類に注意!

ジクロフェナク、メフェナム酸、アスピリンが含まれる解熱剤は絶対に使用しないでください!

これらの解熱剤を使用すると急性脳症を引き起こすことがわかっています。

現在、インフルエンザの子どもに使用される解熱剤は主にアセトアミノフェンです。乳幼児には自己判断で薬を服用させず、医師から指示されたものを使いましょう。

 

脳症の症状以外にも以下のような症状があった時は病院を受診しましょう!

  • 呼吸が速い、又は息切れがある
  • 呼吸が苦しそう
  • ぐったりしている、顔色が悪い(青白)
  • 水分やミルクが飲めない、12時間以上おしっこが出ない
  • おう吐や下痢が頻回
  • 胸の痛みを訴える
  • 症状が長引いて悪化してきた、治療しているのに4~5日経っても熱が下がらない

発熱から2日は異常行動による危険行動に注意!

異常行動は、インフルエンザ脳症によるものだけではありません。インフルエンザ発症後に、突然走り出したり飛び降りるなどの異常行動が現れることがあります。これは抗インフルエンザ薬を服用しているかどうかに関わりなく注意が必要とされています。特に就学以降のお子様、発熱から2日以内起こることが多いとされています。

異常行動の例

  • 突然立ち上がって部屋から出ようとする
  • 興奮して窓を開けてベランダに出て、飛び降りようとする
  • 自宅から出て外を歩いていて、話しかけても反応しない
  • 人に襲われる感覚を覚え、外に飛び出す
  • 変なことを言い出し、泣きながら部屋の中を動き回る

住居外への飛び出しや転落による危険防止のため、玄関や窓の鍵を確実に施錠する、ベランダに面していない部屋で寝かせる、一戸建ての場合は1階で寝かせる、できるだけ目を離さないなど対策を講じてください。

異常行動が見られても、数分〜数十分で治って意識が回復しいつも通りの様子に戻る場合は様子をみて構いません。1時間以上続いたり何度も繰り返す時や、異常行動の後に意識状態が悪くなるなど異常行動以外の症状があればインフルエンザ脳症の可能性がありますので救急車の要請も含め、すぐに病院を受診してください。

 

ホームケアのポイント

病院でインフルエンザと診断された後、お家で療養する時に気をつけておくポイントがありますので参考にしてみてくださいね。

  • お子様はできるだけ一人にせず目の届くところで寝かせ、定期的に様子をよく観察する
    お子様の様子は?ぐったりしてる?顔色や呼吸の様子は?水分は取れてる?など重症化の症状や異常行動はないか観察しましょう。
  • こまめに水分補給+安静
    食欲のない時は無理に食べなくてOK。
    食べられそうな時に消化に良いものを食べましょう。水分はしっかりとれるようこまめに飲むよう促してください。
  • 部屋の湿度の目安は50~60%。定期的な換気も忘れずに
  • 寒気のある時は毛布を追加するなど暖かくして!
    熱が上がり切った後は汗をかくので暑すぎないよう温度調節をしましょう。
  • 医師の指示通りに処方薬を服用する

家庭内感染を予防しましょう

インフルエンザの感染経路は接触感染(感染者との直接の接触・感染者が触れたものを触るなどから感染)と飛沫感染(感染者の咳やくしゃみからの感染)です。そのため家族の基本的な感染予防対策が大切です。

  • 感染している人もしていない人も手洗い・室内でもマスク着用
  • 感染している人は部屋を分け隔離
  • 部屋やトイレ・風呂などのアルコール消毒
    特にトイレや風呂、洗面などの共有スペースは念入りに消毒しましょう!
  • タオル、食器の共有はしない、使用後はすぐに洗剤で洗う

インフルエンザにかかった時の登園・登校の目安

インフルエンザにかかった場合、学校保健安全法 施行規則第19条で以下のように出席停止期間が決められています。

  1. 発症(発熱)した日の翌日から数えて5日経過していること
  2. 解熱した日の翌日から数えて2日(幼児は3日)経過していること

この2つを両方満たしていること

 

もっと詳しく知りたい時や受診に迷った時など、リーバーの医療相談でお医者さんに相談することができますのでぜひご活用ください。

参考文献

一般社団法人日本小児神経学会: Q57:インフルエンザ脳症はどうしたら予防できますか?. https://www.childneuro.jp/general/6524/

厚生労働省インフルエンザ脳症研究班: インフルエンザ脳症ガイドライン【改訂版】平成21年9月.https://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/hourei/2009/09/dl/info0925-01.pdf 

厚生労働省:令和6年度インフルエンザQ&A. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2024.html#Q14

政府広報オンライン: インフルエンザの感染を防ぐポイント「手洗い」「マスク着用」「咳(せき)エチケット」. https://www.gov-online.go.jp/useful/article/200909/6.html

子どもを亡くした家族の会小さないのち(厚生労働省インフルエンザ脳炎・脳症研究班編集):「インフルエンザ脳症の手引き」. https://chiisanainochi.org/wp-content/uploads/2019/02/tebiki.pdf

e-GOV法令検索: 学校保健安全法施行規則(昭和三十三年文部省令第十八号),第十九条. https://laws.e-gov.go.jp/law/333M50000080018#Mp-Ch_3